コラム

【感想】「失敗の科学」を読んで、”失敗とは何か”を考えてみた

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「失敗って何?」

 

 

今回のオススメ本は「失敗の科学」です。

 

 

本書は、失敗について科学的に検証し、失敗の本質的な構造について語られています。

 

 

仕事や生活の中で、人は失敗をします。

 

 

普段から失敗と隣り合わせで生きているのに、なぜ失敗をするのか、なぜ失敗を怖がるのか、そして失敗の意味とは何かを理解している人は少ないように思います。

 

 

失敗とは人生において誰しもが経験をすることであるにも関わらず、その存在への理解どころか、むしろ目を背けてさえします。

 

 

しかし”失敗を理解すること”が、危険を回避したり挑戦の成功率を高めたりと、人生をよりよくすることにつながるはずです。

 

 

ということで、この記事では「失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織」から失敗について考えていこうと思います。

 

 

 

なぜ失敗するのか?

人はなぜ失敗するのでしょうか?

 

 

思いつくこととしては、経験したことがなかったり、確認していなかったり、ボーっとしてしまっていたりでしょうか?

 

 

「失敗の科学」では人が失敗する原因を探るために、航空業界と医療業界を対比してそれを検証しています。

 

 

まずは、2つの業界における失敗における状況について見ていきましょう。

 

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航空業界における失敗

飛行機事故が起こるとセンセーショナルなニュースとして世間に出回り、その事故原因においては人為的ミスとして報道されることも多々あります。

 

そのためか、”飛行機=危険=失敗”という認識を未だ持っている人も少なくありません。

 

ただし本書によると、飛行機事故においての状況は劇的に改善されてきたと言っています。

1912年当時には、米陸軍のパイロットの14人に8人が事故で命を落としていた。2人に1人の割合だ。

2013年には、3640万機の民間機が30億人の乗客を乗せて世界中の空を飛んだが、そのうちなくなったのは210人のみだ。

欧米で製造されたジェット機については、事故率はフライト100万回につき0.41回。単純換算すると約240万回フライトに1回の割合となる。ー P18-P19

 

航空業界は当初、失敗により多くの命を失ってきたものの、今日では極めて安全が確保されており、失敗はレアケースとなっています。

 

過度なプレッシャーが失敗を誘発するものです。

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医療業界における失敗

一方で医療業界もまた、医療ミスで度々世間を騒がせます。

 

しかし僕の感覚としては、航空業界よりも医療業界に対しての信頼の方が厚いような気がします。

 

では、実際はどうなのでしょうか?

 

本書によると、このように状況が述べられています。

1999年、米国医学研究所は「人は誰でも間違える」と題した画期的な調査レポートを発表した。その調査によれば、アメリカでは毎年4万4000人~9万8000人が、回避可能な医療過誤によって死亡しているという。

ハーバード大学のルシアン・リープ教授が行なった包括的調査では、さらにその数が増える。アメリカ国内だけで、毎年100万人が医療過誤による健康被害を受け、12万人が死亡しているというのだ。

ジョンズ・ホプキンス大学医学部のピーター・プロノボスト教授は、2014年夏の米上院公聴会で次のように発言した。

つまり、ボーイング747機が毎日2機、事故を起こしているようなものです。あるいは、2ヶ月に1回「9.11事件」が怒っているのに等しい。

回避可能な医療過誤がこれだけの頻度で起こっている事実を黙認すことは許されません。

この数値で見ると、「回避可能な医療過誤」は、「心疾患」「がん」に次ぐ、アメリカの三大死因の第3位に浮上する。ー P19-P20

 

意外にも、医療業界では避けることができるはずの事故で多くの人の命が日々失われており、航空業界と比べて明らかに失敗に対する改善が見られないようです。

 

失敗にはしても許される失敗と許されない失敗があります。

関連記事 【理由】仕事では「していいも失敗」と「してはいけない失敗」がある

 

 

失敗の原因

では、この2つの業界における”失敗する”か”失敗しない”かの原因はどこにあるのでしょうか?

 

それについては、「クローズド・ループ現象」が大きく関係していると本書では述べられています。

 

クローズド・ループ現象とは、失敗や欠陥にかかわる情報が放置されたりして、進歩につながらない現象や状態を作り出すことです。

 

この現象が医療業界には蔓延しているため、不要な事故(失敗)が無くならないというのです。

 

一方で航空業界では、クローズド・ループ現象とは逆に「オープン・ループ」が起こっていることで、不要な事故(失敗)を防ぐことができているのだということです。

 

これは、失敗は適切に対処され、学習の機会や進化がもたらされることを意味します。

 

ちなみに航空業界におけるオープン・ループの事例として、このようなことが挙げられています。

2005年、ケンタッキー州のレキシントン空港近辺で、複数の航空機から次々とエラーレポートが送信された。滑走路までのアプローチに問題が発生していたのだ。当時、空港のすぐ外側の空き地には、地元の自治体が設置したばかりの巨大な壁画があり、その上部には夜間用のライトがついていた。

このライトがパイロットを混乱させた。壁画のライトを滑走路のライトと見誤り、侵入高度を間違えていたのだ。幸い事故には至っていなかったが、匿名のエラーレポートのおかげで、死亡事故が出る前に潜在的な問題が明らかになった。この件にかかわった航空安全専門家のショーン・プルニッキは私にこう話してくれた。「ものすごい数のエラーレポートが届きました。おかげで、対処しなければならない問題があることにすぐ気づくことができました」ー P43

 

つまり、航空業界ではこのようなオープン・ループによって失敗を防ぐことができている一方で、医療業界はクローズド・ループによって失敗がもたらされていると言えます。

 

そしてこのクローズド・ループ現象に陥ってしまうのは、人が失敗を恐れるからなのです。

 

ちなみに他人はどんな失敗をしているのでしょうか?誰かの失敗談を聞くことってあまりないですよね?

関連記事 「仕事の失敗談」みんなはどんな失敗をやらかしているのか?【紹介】

 

 

 

人は失敗を恐れる

では、人はなぜ失敗を恐れるのでしょうか?

 

 

それは、人は本能的に失敗を不名誉なもの捉えるためだと考えられています。

 

 

本書の中で、このように言われています。

オーストラリア、グリフィス大学のシドニー・デッカー教授によれば、失敗を不名誉なものととらえる傾向は少なくとも2500年前から見られるという。ー P25

 

 

つまり、人は大昔から失敗に対してネガティブな感情を持っており、また、そう感じるために以下のような保身に走ってしまうということなのです。

研究によれば、人は失敗を恐れるあまり、度々曖昧なゴールを設定する。たとえば達成できなくても、誰にも非難されないからだ。失敗する前から、面目を失わずに済むよう逃げ場や言い訳を用意しているのである。

人は失敗を隠す。他人から自分を守るばかりでなく、自分自身からも守るために。実際我々には、ちょうど映画のシーンを編集でカットするように、失敗を記憶から消し去る能力があるという実験結果も存在する。ー P24- P25

 

 

そして失敗を不名誉なこととしてとらえることで、クローズド・ループ現象に陥ってしまうというわけです。

クローズド・ループ現象のほとんどは、失敗を認めなかったり、言い逃れをしたりすることが原因で起こる。疑似科学の世界では、問題はもっと構造的だ。

つまり、故意にしろ偶然にしろ、失敗することが不可能な仕組みになっている。

だからこそ理論は完璧に見え、信望者は虜になる。

しかし、あらゆるものが当てはまるということは、何からも学べないことに等しい。ー P65

 

つまり、失敗への恐れがさらに失敗の可能性を高め、それが繰り返されるということにつながるわけです。

 

 

しかし実際、失敗とは恐れるべきものではないのかもしれません。

 

仕事で失敗をしてしまっても隠そうとしてはいけません。失敗は不名誉なことではないのですから。

関連記事 仕事のミスを隠すとさらに失敗を誘発してしまう2つの理由【解説】

 

 

 

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失敗の効用

人は失敗を恐れる生き物だということについて話してきましたが、そんな失敗にもポジティブな側面があるのです。

 

 

その一つとして、失敗は学びをもたらすことです。

 

 

失敗をすることで、それまで知り得なかったことを知り得ることにつながります。

「人間は車と違いますが、基本的な原理は適用可能です」CEOのカプランは、私の取材でそう話してくれた。

「失敗に対してオープンで正直な文化があれば、組織全体が失敗から学べます。そこから改善が進んでいくのです」ー P71

 

 

そして二つ目は、失敗は改善をもたらすことです。

 

 

本書では、アフリカのとある貧困の村で、子どもたちの学力向上のための施策について書かれています。

そこでは、何が学力向上につながるのか見当もつなかいために、色々な施策を行っているのですが、それはあえて失敗することで見当をつけようとするのです。

ケニア西部のブシアとテソという二つの貧しい県で、小さな教育プログラムのRCT(ランダム化比較試験)を実施し、学力向上の効果を検証した。

一方のグループ(介入群)ともう一方のグループ(対昭群)に分け行った。

(1)教科書の配布→介入群と対照群の成績は変わらなかった(教科書が英語で書かれていたことで内容が理解しづらかったことが原因)

(2)資格教材(簡単な図表など)→介入群と対照群の成績は変わらなかった

(3)駆虫薬の配布→学校の欠席率が25%低下、子供の身長が伸び、際感染率が下がった(寄生虫が子供の発育不良や無気力の原因)ー P217-P219

 

このように、失敗するまで分からないことは多いものですが、失敗することで改善への道が開かれるのです。

 

 

つまり、失敗とは”学びと改善”という効用をもたらすのだと言えるのです。

 

 

怪我の功名ではありませんが、失敗は環境や状況が変われば成功の基となります。

参考 「仕事で失敗した…」という時こそ転職のチャンスなのはなぜか?

 

 

 

まとめ

本書では、この記事で紹介したこと以外にも、心理、進化、思考といった側面から失敗をとらえたことについて書かれています。

 

 

誰しもが身近に存在する失敗というものの本質をとらえることで、普段はあまり考えないどころか、むしろ目を背ける対象である失敗に向き合う機会をくれる本だと思います。

 

 

一般的に、失敗とは人から嫌われる存在でありますが、常に傍に存在し逃れることができないからこそ、肯定的にとらえてみることで世界の見え方が変わるかもしれません。

 

本書のまとめ

失敗には”クローズド・ループ現象”が大きく影響しえいる

人が失敗を恐れるのは、本能的に不名誉なものだと捉えるため

失敗は学びと改善をもたらす

 

 

とはいえ、下手な失敗をしないためには自分強みや特技を把握しておくことをオススメします。

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KEI

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