










この記事を読んでほしい人
- 良い習慣を身につけたいと思っている人
- 悪い習慣を止めたいと思っている人
- 他人にもそうさせたいと思っている人
目次
ナッジとは何か?
ナッジを知ったのは、「ワーク・ルールズ! ―君の生き方とリーダーシップを変える」を読んだ時です。
そこにはこのように書いてありました。
シカゴ大学のリチャード・セイラー教授とハーバード・ロースクールのキャス・サンスティーン教授は共著「実践行動経済学」で、私たちの脳の認知機能を利用して、社会を暮らしやすくすることができると述べている。
同書は行動経済学の「ナッジ(nudge)」という概念を、「選択肢を排除せず、軽味的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャの要素」と定義する。
「純粋なナッジとしての介入は、それを選択しないと判断することが容易で、かつ大きな犠牲を伴わない。ナッジの命令ではない。果物を目の高さに置くことはナッジであり、ジャンクフードを禁止することはナッジではない」。
興味を魅かれたのは、”選択の自由が与えられ、制限や禁止をせずに”人々の行動に影響を与えられるという点です。
というのも、特に仕事においては他人に何かしらの行動を促す際、往々にして選択が制限・禁止された上で、残った選択肢から行動を取るものです。
例えば、朝礼時に上司が部下に営業先への1日100件のテレアポを課すように。
もちろんこれは、営業成果を上げるためには必要な行動ではあるため、それをさせることは何ら間違いではありません。
しかし一方で、ただ単に「1日100件のテレアポを」と指示を与えるだけでは本質的に部下の行動を制限することになり、部下の主体的な行動意欲を失わせてしまいます。
それによって、部下が仕事に興味を持たず自分から考えなくなったり、最悪の場合、仕事に嫌気を差してしまう可能性があると言えます。
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また、自分自身の行動に関しても同様のことが言えます。
例えば、つい休憩の時に甘いお菓子に手を伸ばしてしまう癖を、本当は止めたいと思っているのに止められないという人がいます。
ただそれが習慣化してしまっているため、無意識のうちにお菓子を口にしてしまうのです。
自分自身の行動の場合、多くの人は自分に言い聞かせたり、悪い習慣を止めると誓ったことを思い出すなど、自らの意志の力で行動を変えようとします。
しかし、人間の意思の力は脆いため、結局のところ、多くの人はいつもと変わらずそれまでの行動を取ってしまうのです。
そして、まさにこのような状況にこそ、ナッジは有効な手段となり得るのです。
ちょっとした工夫をすることで、上司からの印象を変えてみませんか?
ナッジで人の行動を操る?
ここまで、”ナッジ”とは一体どのようなものなのかを説明してきましたが、まだ具体的なイイメージがつかないという人もいるでしょう。
そのため、ここではナッジを用いたことで人の行動を変えた事例を交え、ナッジによって人の行動を変える=操ることができるということを話していきたいと思います。
空港の清掃費を削減するために
これはとても有名なので、知っている人もいるかもしれません。
アムステルダムのスキポール空港では男子トイレの清掃費がかさんでおり、その費用削減を目論んでいました。
そこで、「トイレを汚さないようにご協力ください」という張り紙を出す代わりに、便器にハエの絵を描いたのです。
その結果、なんと清掃費が8割も減少したのです。
これは、「人は的があると、そこに狙いを定める」という心理作用を応用したナッジによるものです。
ハエのようなものに目を奪われたように、錯覚を使うことは転職という状況でも役立つのです。
病院職員の手洗い率向上のために
次はアメリカのある医療機関での研究についてですが、ここでは職員の手洗い率が低いことが問題としてありました。
(手洗い場には手洗いを促す張り紙は貼ってありました。)
そこで、集中治療室のドア付近に人の出入りを感知するセンサーと、消毒剤と洗面台を撮影する監視カメラを設置し、24時間監視しました。
しかし、カメラの存在も周知され皆が認識していたにも関わらず、手洗い率は10%にすぎなかったのです。
続いて、廊下に電光掲示版を設置し、10分ごとにこのようなメッセージ表示することにしたのです。
「このシフトはすばらしい!現在の手洗い率95%」
このように、早番や遅番などのシフト間の競争を促しつつ、ポジティブな内容を発信したのです。
この結果、手洗い率は10%→90%近くまで上がったのです。
しかも驚くべきはここからで、その効果は時間とともに落ちることはなく、電光掲示板が設置されている間は続いたのです。
なぜこのように人の行動が劇的に変わったのかというと、以下のことが理由として考えられます。
・行動を促す場合はポジティブな発信が良い
※ちなみに、行動の禁止を促す場合は罰則や脅威の方が良い
・人は将来のことよりも今のことを優先する
→将来の大きな報酬や脅威よりも、すぐにもらえる些細な報酬や脅威を課題に評価するため、電光掲示板の手洗い率が上昇したり、褒められたりしたことで、手洗いにつながった
料理の廃棄を減少させるために
最後は、改めて、「ワーク・ルールズ! ―君の生き方とリーダーシップを変える」で紹介されていた実験についてです。
コーネル大学のブライアン・ワンシンクが南イリノイ大学のミツル・シミズ教授とともに中国料理の食べ放題で行なった実験は、被験者に小さい皿と大きい皿を選ばせた。
小さい皿のグループと大きい皿のグループは、性別や推定年齢、推定BMI、料理を取りに行く回数を同じにした。その結果、大きい皿を選んだ人の方が食べる量が多かったことは、予想がつくだろう。実際、52%も多かった。
しかし一方で、廃棄した食べ物の量も135%多かった。理由の一つは、大きい皿ほど料理がたくさん載り、皿に残す量も多かったからだ。
裏を返せば、取り皿を小さいものに変えるだけで食品廃棄の量を減らせるということです。
反証として、ナッジの効果を裏付けることができるのではないでしょうか。
ナッジを使うには?
改めて、ナッジは仕事や生活において他人や自分の行動を変えるために役立つ手段です。
では、どのようにしてナッジを使えばいいのでしょうか?
そのためには、ちょっと頭を捻って考えることと効果検証してみることです。
冒頭でも話した通り、ナッジは”選択の自由が与えられ、制限や禁止をせずに”人々の行動に影響を与えることです。
そのため、他人も自分も「行動が制限・禁止されている」と感じることがないように、行動を促すことが重要です。
また、必ずしも頭を捻って考え出したことが人の行動を変化させるとは限りません。
そのため、病院職員の手洗い率向上の研究でも行っていたように、それを試して効果検証をすることも大事なことです。
いずれにせよ、ナッジは人に強いることなく人の行動を変えることができます。
軋轢を生むことなく部下をコントロールしたい上司は少なくないはずです。
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